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 イタリアの北部にある世界でも例を見ない水上都市ヴェネツィアで開かれている展覧会はヴェネツィアビエンナーレとして世界各国の現代アーティストの作品を展示しており、現代美術の最新の動向を知るにはうってつけの催しでもある。 この現代美術国際展示会のシンボリックなものにメイン会場のエントランスとしても使われている、大きな配水管のようなものはイタリア各地でも見られ、さながらひとつの作品でもあり、ミニマリズムの作家、リチャード・セラを彷彿とさせる。というか、もしかしたら彼の作品かもしれない。その大きな配水管の中は一つのオフィスになっており、入場券を販売する事務所としての機能を発揮している。そして会場へ入るのだが、これもまた配水管の中を通って入場できるようになっていて、素晴らしくミニマリスティックだ。イタリア各地で見られるということは会場がいくつも散らばっていて、夏ともなれば多くのバックパッカーで賑わうイタリアならではであろう。
 Giardiniのメイン会場はここがヴェネツィアである事を忘れさせてくれるくらいの広大な公園を占めており、大きな木々が至る所に繁っていて、夏訪れるには非常に気持ちがいい。 入口を入ってすぐのところに木で作られた大きなインスタレーションがあり、表面の彩色と、立てられて設置してある木の上部に申し訳なさそうなくらいの布みたいなものを除いたら、それが作品であることを見過ごしてしまうくらいのものが置かれている。そして、その向こうに見える建物が一番大きいのであるが、なにも建物があるのはそこだけではない。公園の中にいくつもあるので、雨なんかが降った時には傘をさして移動しなければならない。イタリアの夏はよく雲一つない青い空となんて形容されるので、確かに晴天ばかり続く日がほとんどなのだがこの日(7月23日)は違った。北の空が異様に暗く、少しづつこちらに近づいているのが見てとれて分かったから、そのうち雨が降って来ることを覚悟しつつ、ついてないなとぼやきながら足早に展示作品を見ていると、そのうち夕方のように暗くなってきて暴風が吹き出した。 建物の中に入って作品を見ていると、天井の方で音がしたので、ついに降ってきたかと思ったが、降ってきたのはなんと雹だった。傘があったとしてもとても出られないので、どのくらい呆然と外を見ていたか定かではない。後のクダラナイ作品を思えば、それが一番のアートでもあった。
 夕立を代表するように夏の雨はすばやく降って、すばやく止むのはイタリアも同じでほどなく止んだが、そのあとのまだ雫が残っている木の葉の隙間から見えた、大運河の煌く水面が素晴らしく心地よく美しかった。
 さて、周囲の情景はこの程度にして、もっとも印象に残っている二つの作品を紹介しよう。一つはよく細菌の培養なんかで使われるプレートというのかガラス容器のなかに蠢いている細菌らしきものが、じつは人間の集団であるという作品だ。作家が誰であるかはあまり関係ないというか、ビエンナーレのゴミのようにある膨大な作品の中では、もっともインパクトの強い作品だろう。この作品は人間も細菌もマクロで眺めれば、そんな大した違いはないという印象を強く持った。 もっとも作家の方にしてみれば、そんな考えでこの作品を作ったというよりも、ただ単に面白いだろうといった考えなんじゃないのかな。もう一つもそんな感覚で作ったんじゃないかと思われる作品だ。写真では分かりづらいかもしれないが、部屋に入るとオレンジ色の光が充満していて、気が付くと手足や着ている服などの何もかもが、色彩を失っているという、これはかなりはっとさせられる作品で非常に面白いが、だからなんなんだとも考えさせられてしまう一面も持っている。というより、それが現代美術というものであろうか。
 Giardiniのメイン会場を出て、少しばかり行ったところに今度はArsenaleの展示場だ。ここは造船所の倉庫のような中を展示会に設けており、最もクダラナイ多くの作品がガラクタのように所狭しと置かれているが、かなり奥行きがあって、全て見るのにかなりの苦痛を伴う。その大半の作品は記憶に残っていないが、とにかくうんざりした事はよく覚えている。
 ヴェネツィアでの展示場はもう一ヶ所、Museo Correrとしてサン・マルコ広場の一角にあるが、こちらは毎日やっていて今回は時間と体力の都合で断念した。
 以上、私がみてきた有名なヴェネツィアビエンナーレを率直に記してみたが、現代美術というものは高尚なちょっとひとりよがりの誰もが参加できる、現代という時代ならではの大きなシステムの中での小さな自己実現という印象を非常に強く持った。

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